電力需給の逼迫時に、オンライン発電所がオフライン発電所の代わりに出力制御を行う場合に、その対価として、オンライン発電事業者に支払われる「代理制御調整金」の制度が導入されています。しかし、現在の制度では、スマートグリッドの理念とはほど遠い、投機的開発事業者の救済制度になってしまっています。制度の見直しを求めます。
遠隔地のメガソーラーは電力不足の解消に貢献していない
代理制御調整金の対象となる発電所は、主に僻地に建設されたメガソーラーです。これらの発電所は、天候や時間帯によって発電量が大きく変動するため、電力需給のバランスを調整するために、出力制御の対象となることが多くなります。
しかし、実際には、これらの発電所は、日本の電力不足の解消にほとんど役立っていません。需要地(都市部)から遠く離れた僻地に建設されたメガソーラーは、送電網の容量を超えて発電しても、需要地に送電することができないからです。再生可能エネルギーの開発が推進された2012年頃には、安価に建設できる遠隔地へのメガソーラー建設が相次ぎ、多くの投機マネーが流入しました。
投機の失敗は自己責任
売電が行えていないメガソーラーで発生している損失は、需給バランスや広域送電能力の限界から建設時に十分予想されたものも多いのです。これは、安定供給のための買取抑制による損失とは本質的に異なるものです。
安定供給のための買取抑制は、電力需給のバランスを保つために、必要に応じてすべての発電所に対して行われるものです。ところが、現状で大規模な買取抑制が発生するケースは、本来売電できる電力が出力制御によって抑制されているわけではなく、そもそも需要地に送電できないため、損失が発生しているのです。
スマートグリッドを後退させる制度
遠隔地メガソーラーの抑制損失への穴埋めを、需給バランス内で売電してスマートグリッドに貢献している小規模発電者への売電料金のカットで賄うことは、とても不公平な制度になっています。
小規模発電者は、自宅や近隣で発電した電力を、自家消費や地域内で売電しています。これらの発電所は、送電ロスが少なく、安定供給にも貢献できます。
しかし、遠隔地メガソーラーの損失を穴埋めさせられる代理制御調整制度によって、小規模発電者の売電収入が減少しています。特に2023年の夏は大きな代理抑制が行われ、住宅ローンの返済計画が狂ってしまった方も多く居るでしょう。
さらに言えば、代理制御調整に使われているお金は、国民が電気代に乗せて支払っている再生可能エネルギー発電促進賦課金として支払っています。つまり、国民の負担によって、乱開発投機の損失が埋められているという問題があります。
結論
代理制御調整金制度は、国家の電力政策であるスマートグリッドの推進と、助成金投機ビジネスとをごちゃ混ぜにした乱暴な議論の上に成り立っており、その比率も月によっては3~4割に及ぶなど、無視できないどころか大きな割合を占めるようになり、スマートグリットやエネルギーミックスの推進を大きく後退させています。代理制御調整の対象となる発電所の選定基準を見直し、需給バランスや広域送電能力の限界を考慮する必要があります。
政府は、これらの対策を検討し、代理制御調整金制度の公平性を向上させ、電力需給の安定化を図っていく必要があるでしょう。