9月19日は、オープンソースの祭典 OSC広島、20日は中国地方最大のデータベース勉強会 中国DB勉強会in広島 に参加しました。

昔よりは情報を得る地域格差が縮まっているとは思いますが、議論の場となれば話は別で、やはり地方において、最新の情報について話を聞いたり相談できる場は限られています。そうした溝を少しでも埋めてくれているのが、こうした勉強会で、主催・運営して下さる皆さんには本当に感謝しています。

オープンソースは、高価な製品の代替品ではなく、企業活動の中心的役割を担うに至っています。一方で栄枯盛衰が激しく、選択を間違えるとメンテナンスで大変な思いをしますので、こういう場で情報を集めるだけでなく、いざとなったときに相談できる人脈を作っておくことがとても大事です。いつかここで登壇できるようになりたいものですね。

これだけのイベントですので、それなりのコストがかかります。この2つの勉強会は、そのコストを参加費以外で調達しているため、ある程度の参加者数実績を上げないといけないという苦労があるようです。それには告知が大切なのですが、広島の(広島だけ、という意味ではないです)参加者は、この勉強会の大切さが分かっているので、告知もできる範囲でやりますし、ドタキャン率も低いとか。参加者も、主催者の負担を軽くすることを意識して、こうした活動を継続していけるような文化を創らなければなりません。

そういう意味では、今、ちょうど勉強会ブームが過ぎ、最初に企画した人から、次の世代への運営の世代交代の時期にあるようです。コミュニティに関して意識の高い方は、主催者や運営陣の負荷分散など、地方での勉強会イベントのノウハウ自体をパッケージング(テンプレート化)されていて、長期的な開催を意識した運営をされているようです。この勉強会が長く続けられるように、我々参加者も意識を高く保たないといけませんね。

以下、戦利品です。

OpenSSH実践入門

くじ引きで当たりました。これはかなりの大当たりだと思います。毎日使う重要なインフラなので、一度きちんと読んでおきたいです。

 

たまゆらのお酒

去年に続いて、じゃんけん大会で初回勝利。2年連続たまゆらのお酒を頂きました。これも大当たりだと思います。


AngularJSアプリケーションプログラミング技術評論社さんより出版されている「AngularJS アプリケーションプログラミング」を、WINGSプロジェクトさんの書籍レビュアーに応募し、献本頂きましたので、レビューいたします。私はWebシステム開発の専門家ではないので、間違いがあればご指摘頂ければ助かります。

最近のリッチなWebサイトは、もれなく何らかのフレームワークを用いて作られています。言語とフレームワークが一体となっているJavaとは違い、perlやphpなどの柔軟なスクリプト言語においては、その柔軟さ故に大規模なシステムを一貫したルールに則って開発していくのには不向きでした。そのうち、サーバ側の処理能力も高くなってLAMP(perからphp)が台頭してきたこともあり、コンテンツを一貫した見栄えで供給できるCMS(XoopsやWordpress等)が登場し、より複雑なコンテンツを体系定期に設計・実装していくためのフレームワーク(CakePHPやFuelPHP等)が登場しました。

このAngularJSは、こうした大規模システムを構築するためのフレームワークの一つです。ただし、これまでのフレームワークと違い、クライアント、つまりブラウザ上で動作するJavaScriptのフレームワークです。JavaScriptは、多くのブラウザ上で動く唯一の言語ですが、私から見るとかなり癖の強い言語で、ある意味柔軟ではありますが、とても大規模なシステムを構築するには向いているとは言えません。ですから、登場からかなり長い期間、JavaScriptは不遇の時代を過ごしましたし、2010年代になって脚光を浴びた際も、jQueryのような、ピンポイントの利用に限られていました。

ところが、その後スマートフォンの普及によって、クライアントサイドで動くアプリケーションでも、複雑で洗練された処理が求められるようになってきました。当然、Webシステムに対してもその価値観が及びはじめ、とても生産性が高いとは言えないJavaScriptで、大規模で系統だったシステム開発への要求が高まってきました。

こういったなかで登場したのが、このAngularJSです。(大きく分類すれば)サーバサイドのフレームワークに広く使われているMVC型のフレームワークをJavaScriptに導入したもので、多くの処理をクライアント側でやってしまおうという、大胆な試みです。このあたりの基礎的な背景も1章で触れられています。類似のフレームワークの中ではやや後発ですが、シリコンバレーでは確実に本命視されているフレームワークです。特にAngularJSはフルスタック(必要な全ての機能を体系的に提供する)フレームワークですので、サンプルコードの中には、非力なマシンだと若干重い事もありました。幸い、プロセッサの処理速度や、ブラウザの実行エンジンの高速化、データ回線の高速化は日進月歩で進んでおり、かなり高度でリッチなシステムも、クライアント側で処理出来るようになっていくと思われます。むしろ、旧来のように、入力を反映させるために「送信」ボタンを押し、POSTをサーバでの処理を経て結果が返ってくるほうが、利用者にとって不便を感じる時代になってきています。また、ブラウザの開発者ツールも充実してきたので、場合によってはクライアントサイドで構築する方がデバッグがやりやすい時代に入ってきています。

AngularJSは、包括的なフレームワークで、jQueryやjQueryUIのような機能なども含めて、アプリケーションに必要なフレームワーク一式を提供します。そのため、その機能は多岐に及んでおり、この本もかなりの分量になっています。正直に言うと、最初の方で簡単なフォームを操作するだけで、なぜこんなに面倒な事をしなければならないのか、jQueryならもっと簡単に、直感的に書けるじゃないか、と思ってしまいました。しかし、それはAngularJSの表面しか見えてなかったからでした。「JavaScriptできちんとしたモダンなプログラミングモデル(例えばMVCモデル)を採用して大きなシステムを構築する」という、素人目には無理難題に挑戦しているのがAngularJSなので、コーディングルールが多いです。本書も見た目の分量は多い(本文で497ページ)ですが、それを一つずつ過不足がなく、無駄なく分かりやすい説明が成されているのが本書でした。これを一冊読めば、かなり高度なサイトも構築できるようになる基礎を身につけられるようにできています。

一方で、JavaScriptは癖が強く、あまり馴染みの無い特徴を多く持っています。jQueryの時代は、そこまで高度な設計はプラグインの作者に任せておいて、利用者はワンラインのおまじないを書いて目的を達することもできました。ですが、AngularJSを使うほどのシステムになると、JavaScriptの細かな動作仕様について知っておかなければ、なぜこういう動作をするのか、なぜこういう「迂回路」のような書き方をしなければならないのか、理解できない部分が多くありました。また、JavaScriptによる制約なのか、AngularJSの設計思想による制限なのかも分からない箇所もありました。もちろん、これは私の勉強不足が原因ですし、そこから説明してたらとても紙面が足りません。言うなれば、本書を読むための「JavaScript入門」がもう一冊あっても良いレベルだと感じました。もちろんJavaScriptの入門書やリファレンスは沢山ありますが、AngularJSの思想は、JavaScriptそのものの思想とはかなり違っていて、むしろそこを埋めるためのフレームワークであると思いますので、本書を理解するための入門書から読みたいと感じました。

本書は「コピペでHello Worldがつくれるよ」という表面上の話だけでなく、フレームワークの構造から、暗黙で動いてるコネクタの仕組みまで詳しく説明している専門書であると言うことです。テーマごとに整理されているので、最初のうちはリファレンスとしても使えるでしょう。本質的な部分を「ここはこういうものです」と誤魔化さずきちんと説明してあるので、フレームワークの裏の挙動をきちんと理解したい、そう思わせる技術書です。

また、後半では、今や必須とも言える「テスト駆動型開発」に必要なユニットテストの自動化や、多くのプラグインによるリッチなUIの実装まで紹介されております。このあたりまで読んでいくと「jQueryでやれば良いじゃん」とは思わなくなってきます。また、本書は入門書から実践書の範囲をしっかりカバーしており、その思想や動作原理を誤魔化すことなくきちんと説明しています。きちんと説明されたら、きちんと理解したい、と思ってしまうのは当然で、それだけ作り込まれた内容であると言えます。JavaScript中級者が、本格的なシステムを構築する際の最初の書籍としてとても良い本です。

同じJavaScriptをベースにしたサーバサイドのnode.jsの開発の勢いは衰えることなく、ECMAScript6 も制定されました。こうしている間にも、AngularJS2 がアルファ版をリリースしていますし、JavaScriptの欠点を補うため、TypeScriptを採用しています。WebSocketのような、粒度の小さい逐次通信技術も発展していますし、AngularJS2とTypeScriptは、今後の大規模Webサイトの本命になるかも知れません。ですが、これはもう少し先の話になりそうですので、ここでAngularJSの基礎を押さえておいて、来たるべき事態に備えておくのは悪くないと思います。

AngularJS2では、双方向バインディングの見直しや、より厳密なモデル化の進化など、より洗練されたフレームワークになりそうですので、AngularJS2が登場した際には、本書のAngularJS2対応版がいち早く読みたいです。また、このレビューの中でやたらjQueryと比較してしまいましたが、本書を読めば分かる様に、本来の目的が全く違います。jQueryと合わせてAngularJSを使う事もできます。カバーする範囲が全く違うのです。また、最近流行のスマートフォンアプリなども、ManifstJS等と合わせて構築できそうな気がします。
AngularJSアプリケーションプログラミング

  • 難易度 : 中級
  • 取っつきやすさ : ★★★
  • 内容充実度 : ★★★★★
  • 読みやすさ : ★★★★
  • 最新テクノロジ : ★★★★★

Web Touch Meeting #78 として、node.js ハンズオンの開催に協力させて貰いました。

東京から、日本のインターネットの中枢を担う、株式会社インターネットイニシアティブの 岩永義弘 さんをお迎えし、たっぷり3時間、座学とハンズオンを行いました。岩永さんと言えば、@ITでの連載もされており、日本の次世代通信技術の最先端におられる方です。地方でのハンズオン開催は初めてとのことで、その初回に広島を選んで頂き、ありがとうございました。wtm78とはいえ、3時間で実装まで行うには厳しく、消化不良で終わらせてしまったので、参加頂いた方には申し訳なく思っています。私が node.js に出会った頃は、日本語で最初の書籍が出版された頃で、まだ大規模案件に使うような段階ではありませんでした。(書籍で紹介されていた node のバージョンも出版時には古くなっているぐらい) ですから、ハンズオンでも、もっとコンパクトでアドホックなお題を想定していました。この点私も勉強不足でした。

また、Windows 環境においては、ターミナルやファイルコピー、エディタなどの基本機能が整っていないため、そういったツールを予め用意して、日頃不慣れな方にむけて、1時間早めに「準備会」を開いておくべきだったと思います。これも次回に活かしたいと思います。

JavaScript ができる人なら、手持ちの技術をネットに繋げてみんなでお互いに操作してみるような事がしたかったのです。WebSocket などでサーバと多数のクライアント(スマートフォンも含む)を結び、片方から emit したメッセージを、他方が on で受け取ったり、それをまた全員にブロードキャストしたりという事が簡単にできるのです。その部分で遊んでもらえるところまでは行きませんでしたが、それ以上に、最新の node.js の事情や、大規模な案件に耐えられる基本設計の指針など、私自身、大変勉強になりました。

私はしばしば上京してこういう勉強会に参加しているのですが、その旅費を使って逆に講師を呼んで、広島で皆に参加して貰ったら面白いのではないか、という発想が元で、このような会を共催させて頂きました。今後も、いろんな企業が、自社の都合で開く勉強会を、少しだけオープンにして、(社外の参加者にはハードルは高くても)最新知識の共有ができたら面白いかな、と思っています。

今回は、参加頂いた方のレベルの高さと、100回を優に超える勉強会を主催されている藤本さんの助けにより、なんとかぎりぎり勉強会としての体はなり立ったのではないかと思います(という事にさせて下さい)。なにより、私にとってこうした機会を与えて下さった皆様に感謝します。

正直に言うと、広島では、node.js を用いた仕事の案件というのはなかなかないと思います。仕事とは別に、こうした面白そうな技術を使って色々遊んでいきたいと思っていますので、一緒に遊んで下さるという方は、ご連絡下さい。また、次回このような機会がありましたら、またよろしくお願いいたします。

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LINEの自作スタンプ、上位は3カ月で1000万円以上の収入という記事がありました。

クリエイター自作スタンプの販売総額は12億3000万円とのことで、LINE社としては元が取れたのかなと思います。システムへの投資や、権利審査という手間のかかるコストを先に払った分、5割という寺銭は大きいですよね。単純に6億円ですから。

一方で、クリエイターの方は、登録料こそ無料ですが、実際にはスタンプの作成費用として、5~50万円分ぐらいの人件費や制作費を払っての参加です。仮に最低の5万円としても、元が取れた(10万円分以上売れた)人は15%程度です。もちろんこれからも売上は上がるわけですが、スタンプ数も某大になってくるので、あまり大きな期待は出来ないと思います。一方で、100万円以上売り上げた人が3.2%居ます。一部は人気のコンテンツを持っている人でしょうが、オリジナルでこの3%に入った人は「成功」を勝ち取ったと言えます。

この統計に入っているスタンプ数ははっきりとわかりませんが、おそらく5,000ぐらいだと思います。登録数が3万とのことなので、1/6が審査を通過していることになります。思ったよりも審査速度が上がっていますね。最近は単色落書き系のスタンプも審査を通過しており、受付開始当初の「3色以上ないものは却下される」といった噂はなんだったのか、と思います。

さて、5千のスタンプの作成に費やされたコストは、1つ5万円としても、2億5千万円です。これは少なく見積もった数字ですし、簡単のため3億円にしましょう。販売額が12億円ですが、これからの売上も収益になるので、だいたい販売総額は2~3倍ぐらいになりそうです。2倍としても24億円。手数料云々が5割以上販売元に納められ、概ね12億円がクリエイターに配分されます。つまり、投資回収の期待値は「4」という、宝くじもびっくりの還元率だったことがわかりました。何でも良いので初日に登録した人は勝ち組に入れたのではないでしょうか。

一方で、現在登録されているスタンプは3万セット。という事は、費やされたコストは15億円以上です。今後も販売総額はそれほど変わらないとすれば、期待できる配分総額は12億円程度なので、今登録している人の期待値は、ほぼ「1」で、今がちょうど、期待値的には損益分岐点にあることが読み取れます。LINEのユーザ母集団が伸びると信じるならば、まだ参入する価値はありますが、逆に制作に10万円以上かかるなら、それなりに勝ち残る見込が必要です。

今後は、新規のスタンプがリリースされるペースが、LINEの実行ユーザ数の増加よりもずっと早いので、1セットあたりの平均売上額はどんどん下がっていくと考えるのが自然です。LINEとしても、審査に必要なコストはそれほど下がらないと思われるので、この市場システム自体がいつまで持続可能なのかはちょっと不安材料だと思います。一度審査したスタンプは、LINE側としてもコストをかけて審査して商品にした資産なので、既存スタンプの販売が止まることはないでしょう。ある種の焼き直しが行われる可能性すらあると思います。新規参入の壁は高くなるかもしれませんが、かといって既存スタンプとの重複を審査するとさらに審査コストが高くなるので、なにかわかりやすい形で参入のハードルが上がる可能性はあると思います。


LINEスタンプ「Bob」の多カ国語翻訳が有効になりました。といっても、スタンプ中に文字はほとんどないので、説明文の翻訳だけですが、それでも、母国語で説明が出るのは、非英語話者としては嬉しいですよね。
私の環境では試せないのですが、台湾・中国・韓国・タイ・インドネシアの方には、母国語で説明が出るはずです。
facebookを中心に、翻訳にご協力下さった方に改めてお礼申し上げます。

大人気 LINE スタンプ Bob のお求めはこちらから
https://store.line.me/stickershop/product/1000943/


LINEスタンプ「ボブ」ですが、リリースから10日ほど、なんとか人気順3ページ目(41~60位)あたりをキープしております。

6月組のなかで上位を占めているのが、広島弁スタンプのような、方言スタンプです。これは、ボブのグローバル戦略とは真反対ですが、幾つかは非常に成功しています。西日本地域が多い気がします。購入者は絞られますが、最近の地方・方言ブームをうまくつかみましたね。さすがです。

審査のスピードも速くなってきているようです。現在、2000個ぐらいリリースされているようなので、10日で1000個、1日100個ほどのペースになってきています。現在待ち状態の2万個の審査も200日、年明けには終わる計算です。弊社でも第2弾以降の企画を始めていますが、ボブでさえ、なんとか単独で採算がとれる程の収益だったので、なかなか判断が難しいです。ボブの長期的な売上推移(どの程度の時間をかけてどの程度下がっていくのか)で見極めたいと思います。

そんな中、6月4日に申請した、ボブのVer.2 多言語説明、まだ審査待ちです。テキストだけなので、素早く審査して欲しいです。

 


弊社がリリースした LINEスタンプ「ボブ」について、少し書きます。
(少しのつもりが長くなってしまいました。読むのが面倒な人は最後の1行だけ読んでください。)

企画「ボブ」誕生まで

ご存じの通り、今年2月に、LINEスタンプの一般販売受付の開始がアナウンスされ、4月17日に受付が始まりました。
弊社もITベンチャーを自称している以上、この「お祭り」には参加しないわけにはいきません。

企画する段階で、LINE がどのようなコンテンツを欲しているかを考えました。まず気になったのは、クリエイターページのサンプルが英語だったことです。このスタンプの一般販売受付が、今後 LINE を海外に展開していく上での布石であると解釈しました。海外でも売るために、文化の枠に縛られないコンテンツを考える事にしました。展開市場が広い方がランキングでも有利になるはずです。(後に、ランキングは国別だと知りました。)

そもそも全く知られていないオリジナルキャラでは、ドラえもんのような、既存の有名キャラクタースタンプには勝てません。そこで、誰も権利を持っていないけれど、皆が知っている「キャラクター」を探しました。

やっぱり、定番は「猫」だよなあ、と、おそらく1万人が考えたであろう事を考えていると、ふと、従姪がスマートフォンに貼っていた「骸骨」のシールを思い出しました。私はかわいくないと言ったのですが、従姪はかわいいと言い張っていたのです。もしかして、骸骨柄って人気あるの?

そうして考えついた先が「人体骨格」でした。これなら全ての人類が普遍的にもっているものですし、知らない人も居ないはずです。骨格をデフォルメすることも検討しましたが、そもそも「かわいい系」ではインパクトもないし面白みもないので、思い切りリアルに描いてみることにしました。

ここで、3月20日ぐらいでした。そのときLINEからの発表はほとんどなく、「4月受付開始らしい」という事しか分からなかったので、4月1日にできあがってなければなりません。私は絵が描けないので、フリーランス市場を覗いてみました。既に「イラストを42枚描いて下さい」という、明らかに LINEスタンプ狙いの仕事があふれておりました。ここでふと思いました。そもそも「売れる絵」が描ける人なら、フリーランス市場で仕事を取らずに、自分でスタンプをリリースするのではないかと。フリーランス市場に外注するのはやめました。

そこで思い出したのが、米国W大学のO博士でした。たしか、医学書に骨盤から神経かなにかを取り出す挿絵を描いたりしている方です。こうなったら、この博士と組んで、医学書レベルのリアルな人体骨格スタンプを作ってやろうと思いました。後に「ボブ」となるコンセプトが生まれた瞬間です。

スタンプ作成とエントリー

早速O博士に連絡を取ってみたら、さすが名門研究室です。複製ではなく本物の人体骨格があるとのこと。その名も「Bob」でした。弊社はアカデミックな面白さをベースにしたコンテンツの作成を常に心がけているのですが、結果的にこのプロジェクトも、そのコンセプトに沿ったものになりました。
そこからは毎晩(時差があるので)ミーティングをしました。最初の3日で、コンセプトを具体的に詰めて、具体的にどんな絵を40枚描くのかという方針を決めました。あとは、主に私がアイデアスケッチを送り、ラフ絵、最終稿と仕上げてもらう、という作業になりました。O博士の方からの提案もどんどん取り入れていきました。

Bobオリジナル
(大人の事情により、この写真は樹脂の複製品です。)

この上の Bob が、下のようになりました。

Bobスタンプ

実に素晴らしいです。

私の落書きスケッチ(下)が、次々とハイクォリティのスタンプになっていきます。プロの仕事にはいつも感動しますね。そもそも人間の表情を表す「目玉」と「唇」が無い「骨格」だけで、様々な表情をかき分けたO博士の技術はさすがです。正直言って、最初は骨格だけのキャラクターはもっと無味乾燥な物になるのでは無いかという心配もあったのですが、その欠点は、O博士の骨格愛と画力が補ってくれました。普通の絵描きさんにお願いしていたら、こうはならなかったと思います。

絵のコンセプトがリアルなので、シチュエーションはかなり遊びを入れました。腕立て伏せ運動(腹筋運動と迷いました)は、「お前筋肉無いじゃん!」と突っ込みたくなりますし、ご飯やトイレは、どこに入ってどこから出てくるのか、全く謎です。感電して骸骨になるシーンは漫画でよくある描写ですが、お前は元々骸骨だろ! と突っ込んで貰えれば嬉しいです。

BobConcept1
BobConcept2

O博士とアイデアを練りながら、ボツネタも合わせて50ぐらい作りました。飲酒や暴力というガイドラインのギリギリを攻めたため、reject されたらすぐに差し替えられるように、多めに用意しました。せっかく人類普遍のコンテンツなのでできるだけ文字を入れずに表現できるシチュエーションを選びました。選ぶに当たっては、既存の人気スタンプや、Skypeなどの絵文字に含まれているシチュエーションの統計を取って、概ね多い順に採用しました。このせいで、若干面白みに欠けるラインナップになってしまった感もありますが、それは第2弾で補えればと思います。

また、全体的に色味が少なくなってしまうという問題も発生しました。LINE スタンプのガイドラインには、reject の例として「淡色ばかりのもの」がありました。そこで、多少無理矢理に色を加えるために自転車に乗せたり、青空の中をスキップさせたりしました。結果的に最後の青空スキップの図は、在りし日の Bob の姿を描けたのではないか、と思ったりします。(本物の人体骨格なので、生きていた頃は草原を走ったはずです。) 犬や猫も1つぐらい入れようかと思ったのですが、耳のない骨格だけだと、何の動物か分かりづらいのでやめました。

そうやって1週間ほどで完成したのが、その名もそのまま「Bob」です。最初は40個も揃えるのは大変だと思っていましたが、いざ始まってみるとあっという間に50個近くになりました。泣く泣く削ったものもあります。もっとも、40個以上描く方は大変だったと思います。

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余談ですが、このイラストは、Bob の居る研究室に飾ってあるそうです。もし見つけたら tweet してくださいね。

エントリーから販売開始

4月17日、奇しくも女子大の授業のお手伝いに行っていたときに募集が始まっており、かなり出遅れてしまったので、当初の「初日のラインナップの中でインパクトを示せればそこそこ売り逃げできる」という野望は崩れてしまったのですが、なんとか当日深夜にエントリーしました。いつ審査が始まるのか全く分からないなか、長く感じる日々が続きましたが、しょこたんこと中川翔子さんが骨格標本を彼氏と宣言するなど、ボブのコンセプトが案外ウケるのではないかと勇気づけられることもありました。

審査待ちの間、facebook などの人脈を頼りに、中国語(繁体・簡体)・インドネシア語・タイ語・韓国語などの翻訳も登録しました。こうして、色々な人たちの力を借りて、Bob はリリースされました。それはとてもエキサイティングな経験でしたし、自分のプロデュース力がそこそこ通用したことは、経営者としての自信にもなりまし た。

5月13日、審査が始まり、6月4日、ついに審査がおわり、販売が始まりました。順番待ちはおよそ 2,000番目で、販売開始時のスタンプ数がおよそ 1,000だったので、半数が通過していると思われます。もっとも、途中で reject されても再審査を申請して通過する人もかなり居るでしょうから、最終的には7~8割は通過するんじゃないかと思います。違反さえなければ通過できるんだと思います。そもそも、この「審査」にはかなりのコストがかかっているはずなので、LINE としても、審査コストをかけた以上は売らなければ損ですしね。

おかげさまで、登場数時間で人気順500位にランクインし、その後徐々に順位を上げ、最近は60~70位あたりを上がったり下がったりしております。ただし、管理画面には、配分金額の速報値が出るだけで、売れた個数はわかりません。こまめにリロードして、数字の差分を取ってみると、30~45円とばらつきがありました。国によって販売価格も異なりますし、ポイントなどで購入された物は100円で売れたとは見なされないようです。これはもちろん推測で、本当のところは分かりません。せめて個数だけでも知りたいところです。

先日、外部のランキングサイト「スタリコ」さんのランキングにて、LINEスタンプランキング4位、クリエイターズランキング3位に入りました。どういう順位付けなのか分かりませんが、記念にWeb魚拓を取っておきました。後に、インドネシア市場で1位をとったことを知りました。また、台湾でも人気を博しました。

「ボブ」という名前は、既存のスポンジのキャラクタとかぶってしまった点は失敗でした。しかし、「Bob」を元に作ったイラストですから、やはりキャラクター名は「ボブ」ですね。

こうしてはじまった「LINEスタンプ祭」ですしたが、それにしても、上位陣はさすがにレベルが高いですね。
もっと私にかまってよ!」は、これまでにないスタンプのシチュエーションを提案して一気に話題になりました。
ゆかいなエヅプトくんスタンプ」は、何かの裏紙を使うことでうまく雰囲気を出しています。なにより「私は絵が描けないので」が言い訳にもならないことを知らしめました。
今は少し順位を落としていますが「豪快ハゲオヤジ!」のインパクトは圧倒的でした。

ボブも含めて、これらのスタンプに共通するのは、「突然の登録開始に備えて準備し、当日登録した」点と「既存の、或いは後発のスタンプと競合しないところを狙った」点だと思います。得に前者は重要で、「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」と言いますが、獲物が来たときに撃たなければ絶対当たりません。LINEのスタンプ販売の一般開放という「祭」には、何が何でも参加しなければ「後の祭り」ですから。

ビジネスとしてのLINEスタンプ

最後に、LINE スタンプを事業化しようと考えておられる経営者の方がいらっしゃれば、これは結構考え物です。今回の場合、この「お祭り」に参加する事自体も目的であったため、採算割れ覚悟での参入でした。実際、そこそこ早くエントリーし、そこそこ売れた方だと思いますが、ビジネスとしてはそれほど成功したとは言えません。まして、これからエントリーし、数万のスタンプ(5月末で審査中・審査待ちが2万件以上らしいです)の中から這い上がろうとするならば、相当強烈な商品と、宣伝・販売力が必要だと思います。

「ボブ」が受付順2,000番目で販売までに2ヶ月かかっているので、審査がこのペースだと仮定すると、1ヶ月におよそ1,000個が審査される計算です。今(2014年6月)、20,000番目の方は、20ヶ月後、2016年の年明けぐらいになってしまいます。クリエイターズスタンプの売上が好調なら、審査体制が強化されることもあると思いますし、前例やノウハウの蓄積により、審査のスピードは上がると思いますが、どのみち今からエントリーすると半年とか1年とか待つことになりそうです。1~2年後に LINE のスタンプがどれほど注目されているのか。これも、これから企画をする上でのリスクになります。

最後に

専門家が本物を元に忠実にイラストにした「ボブ」は、お子様の教育にも良いコンテンツだと思います。大学や研究機関が持つアカデミックな「本物」の面白さが、若い世代に伝わればなによりです。


4月17日、LINEスタンプ販売開始に向けてエントリーいたしました。グローバル展開を目指すLINE社の方針に従い、人類普遍のコンテンツにしたつもりです。もちろん完全オリジナルです。
6月4日、一般販売を開始しました。こちらよりお求め頂けます。

We have released a LINE stamp set of Bob. Accordance with the policy of LINE’s aimed at global expansion, we are going to have to content of global humanity. The Bob is a completely original character of us.

BobPoster1024

紹介(information)

English: Bob
Bob teaches students about human bones in the University.

日本語: ボブ
とある大学の学生達は、今日もボブで人体骨格について学びます。

中国語: 鲍伯
鲍伯在大学里教学生人类

中国語(台湾): 鮑伯
鮑伯在大學教學生人類骨骼

Thai: คุณบ๊อบ
คุณบ๊อบ มนุษย์โครงกระดูกเฮฮาอารมณ์ขัน เขาทำอาชีพสอนนักศึกษามหาลัยเกี่ยวกับโครงสร้างกระดูก

Indonesian: Bob
Bob mengajar mahasiswa tentang tulang manusia di universitas.

韓国語: 봅
봅하고 어떤 대학 학생들은 오늘도 봅 자신을 표본으로 해서 인체골격에 대해 배웁니다.

 

翻訳に協力して下さった皆様に感謝いたします。


wordpress 3.8 がリリースされ、日本語版もリリースされました。

弊社管理の wordpress も順次アップデートしていきますが、バージョンが変わると凝ったテーマやプラグインなどが意図したように動作しないことがありますので、不具合を見つけたらご報告ください。

アップデートは、差分を当てる形で行います。

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