この2月に、広島大学情報メディア教育研究センター・総合科学研究科情報システム講座の中村純教授の研究室に、量子色力学計算用の演算サーバと、データの長期保管用ストレージサーバを納めさせて頂きました。
高性能演算器としては、GPGPU と Xeon Phi が選択肢に上がったのですが、計算の詳細を伺って、Xeon Phi のほうが適していると判断し、Intel Xeon E5 v2 のデュアルソケットに、Intel Xeon Phi 5110P を4枚搭載可能な構成を提案させて頂きました。初期段階として、Xeon Phi を2枚搭載したモデルを構築し、計算能力が不足し始めたら4枚に増設予定です。合わせて 2.2TFLOPS(4枚拡張時は4.2TFLOPS) のピーク性能がありスーパーコンピュータ並みの演算性能があります。コストの許す範囲内で、十分なバスレーンやCPUと演算器のバランス、拡張性など、総合的に良い構成にできたのではないかと思います。
GPGPUと同様に、Xeon Phi も、そのパフォーマンスを引き出すには専用のチューニングは必要です。中村教授は、IBM Cell B.E. での計算実績もあり、Phi でも GPU でもチューニングについてはお手の物だと思うのですが、格子計算は、隣接領域の計算結果がすぐに必要なケースが生じるため、多スレッドでメモリアクセスのレイテンシを隠蔽する GPU よりも、高度なキャッシュ制御でコア間の接続の強い Phi のほうが適していると判断しました。この選択が良い方向に働いてくれることと信じます。
中村教授は、計算が困難だと言われてきた有限密度の量子色力学場の格子計算において、世界を代表する物理学者の一人です。1995年の米国スーパーコンピューティング95で、日本グループ初となるゴードンベル賞を受賞されるなど、常に最先端で独創的な計算技法を取り入れ世界をリードされてきました。そんな中村教授の研究に用いる計算機群に、弊社のサーバ群を選んで頂いて、大変光栄です。演算能力では限界がありますが、環境作りではどこにも負けない設定に仕上げたつもりです。今後、この計算機から多くの成果が出てくることを期待します。
演算器以外でも、サーバグレードの冗長電源、冗長HDD構成で、故障の多い電源やHDDのトラブルでは簡単に停止しないような構成にしてあります。この手の計算機では、故障時にすぐに修理用の部品が調達できないこともあるので、多少の故障では止まらない事も重要と判断しました。計算機屋のできることは限られていますが、最大限研究をサポートできる環境作りを目指しています。このような案件のご相談もお受けできますので、遠慮無くご相談下さい。
Comments are closed