ちょっと間が空いてしまいましたが、9月15日の「Web Touch Meeting #71」と、11月26日の「広島の楽しい100人」というイベントで、私のお話をさせて頂きました。
「Web Touch Meeting」は、もう70回を超える長寿イベントで、Web やその界隈の現場の人たちで情報を共有しようという勉強会です。一方、「広島の楽しい100人」はまだ2回目なのですが、毎回、楽しいことをやっておられる4人の方のお話を聞くという会で、今回もとても豪華なメンバーのなかに(なぜか)私という組み合わせでした。亀仙人のついでに聞いて下さった方も多いと思います。ありがとうございました。そもそも私なんか、何かをなしえたわけでもないのに、話なんか聞いてみんな楽しいのかという疑問だらけだったのですが、それはこの際棚に上げて、お話しさせてもらいました。
そもそもの発端は、WTM で40分の話をさせてもらったことがきっかけで、楽しい100人のお話を頂きました。WTM の時は、研究者を目指していた時代についてのスライドは数枚だけだったのですが、主催者の意向も受け、100人では聴衆置いてけぼりのリスクをとりつつも、がっつり入れました。もちろん、本来それぞれ3時間ぐらいかけて説明できると面白いのですが、それはまた別の機会に。何かそういうイベントがあったら物理も喋りますので呼んでください! いや、その時は本物の物理学者を呼んだ方が面白いか…。
楽しい100人では、一人の聴衆として、非常に心を動かされたお話がありました。1番目に登壇された、ゴトウイズミさんのお話の中で「ダメだと思ったらすぐに方向転換してみる」という「楽しみ方」の秘訣です。大筋では信念を曲げないことが大事ですが、大きな目的のためには小さな凹凸は避けて通る事も大事。転進は負けじゃないんです。(ゴトウさんはそういう意味でお話しされたのでは無いかもしれませんが、私はそう解釈しました。)
後で幾つか質問を受けましたので、幾つかお答えしたいと思います。
- ユーザの集め方を教えて
WTM で触れましたが、需要側・供給側の両方に喜ばれるサービスは、潜在的に伸びると思います。時代と需要を捉えていることと、最小限のデザインは必要です。もっとデザインや使いやすさを追求していたら、価格広場はもう少しシェアを広げていたと思います。
- 今、注目している Web 技術は何?
なかなか難しい質問です。私はいわゆる「Web屋さん」ではないので、あまり技術的なところは強くないのです。IaaS などの抽象化技術は、アイデアをストレートにモノにする技術だな、と感じます。サーバを管理するのは、管理が好きな人だけやれば良い時代なのかなと思います。
あとは、3Dプリンタや特注基板など、ハードウエアの小ロット生産もハードルが低くなっていると感じます。ハード・ソフト一体のソリュージョンも増えてくると楽しそうですね。
- 在宅スタッフを採用している職種は?
ほとんど全てです。プログラミング・デザイン・データマネージャ・データ入力まで、多くの部分を社内外の在宅スタッフに任せています。さすがに物理サーバの管理は私がやっています。素晴らしい技術をお持ちなのに、色々な事情からフルタイムで働けないという方は多いので、そういう能力を集結できる場であればと思っています。ですが、反面、1ヶ月に投入できるリソースの予測が難しく、直に収益に繋がる仕事がとりにくいので、経営はとても厳しいです。在宅ワーカの皆さんにとっても、ノルマ等がない分、他の内職よりは多少マシってだけですが、それぞれやりがいを感じて取り組んでくれているので、大変助けられています。
- 選択に迷ったときどうする?
研究者をやっている先輩に「悩んでも良いが、迷ってはダメ」と言われました。その通りだと思います。やるならやって、ダメならやめる。それだけです。迷っている時間があったら少しでもやってみて、情報を集めてから悩めば良いと思います。最後は「ここまで悩んだんだから(反省することになっても)後悔しない」という決断です。
- 「楽しい」で食べて行くにはどうしたらいい?
現実的に答えると、チームを組むことだと思います。私は経理やデータ管理は大嫌いですが、それが楽しいと思う人も居るので、そういう人と長期間チームを組める体制を整えると良いと思います。特に、事業としての体制を整えるなら、お金周りは税理士や会計士に任せた方が良いです。チームの「楽しい」を引き出して、みんなが楽しめる環境が出来るといいですね。成功している小さな企業にはこういう感じのところが多いと感じます。規模が大きくなると難しいと思います。
- 好きではない仕事をしている人にメッセージを
今回は「楽しい100人」というテーマでのお話だったので、楽しそうな話をしましたけど、細かく見ると、楽しくない仕事もやってますよ! むしろ、それも含めて全体として「楽しい」と思えるかどうかだと思います。家族のために働いているという人も、言い換えれば、その人の「楽しい」は家族との時間だったりしませんか? それと、「気は持ちよう」と言いますけど、苦労して当たり前、その向こうにある「楽しい」に目を向けて仕事が出来るかどうかだと思います。特に100人の皆さんはそうでしたよね。私は、、、まだ、しんどいと思ってしまうので、修行が足りません…。
時間の関係で泣く泣く削ったエピソードを一つ紹介したいと思います。
研究者時代、とある大学の募集に応募したときのことです。その大学では、まさに数年越しで建設を進めてきた大型実験装置が稼働するということで、そこで研究するスタッフを募集していました。私みたいな下っ端は、こういういろんな公募に片っ端から応募するわけですけど、この大学の先生に「このポストに応募するんだから、研究内容はその装置を使って出来ることを提案した方が受かりやすいですかね?」というような事を訊きました(我ながら小者感あふれる質問です)。その先生は一蹴して「君は自分の研究が一番面白いと思っているんだろ? だったら、『お前達の計画している実験より俺の研究の方が面白い。その研究をお前の大学でやってやるから俺を雇え』と説得できなきゃダメだろ」とおっしゃいました。全くその通りだと思いました。私はそれで研究計画を出しました。
とはいうものの、実際、それでは書類審査も通らないだろうと思い、欧州の研究所に長期出張をいれたのですが、滞在中にその大学から、「2次面接に来い」との連絡を頂きました。今欧州で、役割もあってすぐには向かえないと相談すると、「じゃあいつなら来られるんだ?」とのこと。会計年度末の差し迫った頃に日程を組んで頂き、面接試験を受けさせて頂きました。研究計画を発表後、おそるおそる「ちなみに、結果はいつ分かるのでしょうか…?」と伺うと、面接官の一人が「バカ! 忙しい我々が、君のために何度も集まれる訳がないだろ。今から決めるんだよ!!」と冗談交じりに言われました。
やはり(なかなかに難しいですが)、自分(自分のやっていること)に良い意味で自信を持つことが必要なのだと思います。幸運にも、私はこれまで多くのチャンスを頂きました。そして、それを掴んで、努力もしたつもりです。力及ばず物理の研究者として生き残れませんでしたが、最後までブレずに挑戦させてもらえました。また、学閥や国籍を超えてきちんと(むしろ過大な)評価して頂いた上での敗北なので、失敗も沢山ありましたが、後悔は残りませんでした。
また、このように、これまで、人生の節目節目で良い人に巡り会えたと思います。他の子と違う事は良い事でもあると教えてくれた保育所の所長先生、挑戦を教えてくれた小4の時の担任の先生、情報センターで思うまま遊ばせてくださった教授、大学で長くお世話になることになる研究室に誘ってくださった教授、そして、一番つらい時を支えてくれた人と家族。また、こうやって別の道を歩み始めた会社を支えてくれたスタッフさん達、勉強会でお世話になった皆さん、多くの方々に感謝しています。我ながら甘い人生観なのですが、これからの人生でも、大きな困難にぶつかったときは、また誰かに助けてもらって乗りきっていけるんじゃないかと思っていたりします。私は強い人間ではないですし、これまでも一人だけで切り開いた人生じゃありませんから、助けを求めます。これを読んでくださった方の助けを借りることもあると思いますので、その時はよろしくお願いします。
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